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ネットワーク通信バックナンバーREPORT

りょうちゃん、行くな!

                    小学校教諭   田井玲子

一学期の終業式の日です。私が、
「明日から夏休みだね。元気 で過ごしてね。」
と言うと、いつもあまりしゃべらないこうちゃんが、
「りょうちゃん、高梁なんか 行くな。りょうちゃんがお らんとおもしろうねえ。」
とぽつりと言いました。それを皮切りに、みんなが次々に、そうじゃそうじゃと言い出し、教室は騒然としました。
 りょうちゃんは、お父さんの仕事の都合で、八月より高梁の小学校へ転校することになったのです。
 いつも優しいりょうちゃん。一学期の振り返りカードに「たくさんのともだちができてたのしかった」と書いたりょうちゃん。「こくごもさんすうもたいいくもずこうもどうとくも、みんなたのしかった」と書いてくれたりょうちゃん。
 終業式のあと、全校の前でお別れの言葉を言うはずでしたが、一言も言葉が出ず、下を向いてじっとしていました。りょうちゃんの言いたかったことはわたしがメモをして持っていたのですが、それを代読した私まで泣けてきて、お別れ会の式はさんざんなものでした。私の手をぎゅっと握って、抱きかかえられるようにして自分の席に戻りました。
 終業式の前日には、お別れ会を開きました。りょうちゃんに内緒でお別れ会の準備をしてきた一年生の子どもたちは、終始ハイテンションで、りょうちゃんも笑顔で過ごしました。憂鬱な気持ちの私は「おじいさんおばあさんの葬式は孫の祭り」と言う言葉を思い出して、子どもってそんなものなのかなと思っていました。
 でも、りょうちゃんの転校にさみしい気持ちでいたのは、私とりょうちゃんだけではなかったのです。四月から、一緒に勉強したり遊んだり川遊びをしたりシャボン玉遊びをしたり運動会でカニを探したり・・・一年生みんなみんなさみしかったのです。
 新学期になり、そこにいたはずのりょうちゃんがいないという現実を目の当たりにしたとき、子どもたちはどんな気持ちになるのでしょう。案外、さらりと受け止めて、いつもの毎日が過ぎていくのかもしれませんが・・私にできることは、楽しくて有意義な日々を残った子どもたちと積み上げていくことしかありません。
 りょうちゃんが新しい学校に早く慣れ、楽しい日々を送ることを祈りたいと思います。
     たい れいこ

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ひとこと


いつも読み応えのある通信をありがとうございます!! 安藤

創立27年すごいですね!今後のご活躍をお祈りします         池上

会報はきちんと読んでいます。が、外出を伴うものは足が悪く参加ができません。悪しからず。ぼちぼちの体調です         鴨川

通信を毎回楽しく読ませていただいています。志賀さんの実践は、まるでテレビドラマのような子どもとの格闘。お母さんのだっこにまさるものはないという教育の本質など、読み応えがあります。難波先生の花の編集後記には、毎回癒されています。これからも、どんどん発行してください。      石井

久しぶりにTさんに会った。近況を話し合っていると,「息子が小さいときなかなかのやんちゃ坊主で、 ネット ワークに行って相談したんだ。」と懐かしそうに話された。
「今、その子が就職して結婚して子どもも生まれた。」
「早いもんだなあ。あの頃は非行、不登校、いじめ、校内暴力となんでもありで、子育てがむずかしいときだったなあ。親は仕事が大変で生活するのに必死だったし。」
「このあいだナア、子育て真っ最中の息子曰く『親父の言っ ていたネットワークの合言葉<愛して信じて待つ> の 心境がしみじみと解るような気がする』と言うのを聞い て複雑な気持ちだった。」
 ここにもネットワークの思いが受け継がれていると、うれしく思った。
長年の活動は皆様(相談員の先生や協力者)により力強く支えられ続けてこられたことをうれしく思います。毎回の通信を読ませていただきながら読者としてのつながりでそばに居られることの安心感をおぼえます。難波先生の花になぞらえたコーナーはほっとするし、また凛とする。すばらしい。   内田

通信いつも楽しみにしています。総会出席できませんが、いつも感謝しています。  井上

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教育講演会・総会

西﨑さんのお話に 感動!
 この夏も、たくさんの全国大会が行われました。しかも、岡山が会場になったものも多く(学校図書館問題研究大会・人間の「生と性」教育研究集会・教育研究集会2017in岡山・全国養護教諭サークル協議会夏期全国集会)充実した学びと交流があったことでしょう。
 夏の学習の最後は、ネットワークの教育講演会でした。長年子ども劇場に関わり、その後、チャイルドラインを立ち上げた西﨑宏美さンを講師にお招きしました。「子どもシェルターモモ」を弁護士さんと一緒に立ち上げて、児童と成人の狭間の子どもたちの支援活動を行っています。初めて聞くお話で参加者は少なからずショックを受けたような状態でした。次ページに感想を載せています。

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感想


 総会にはなくてはならなくなったネットワーク卒業生の佐藤匡さん。「食べちゃいたいほど可愛い」四歳の子どものお父さんになって、レタス農家でがんばっています。引きこもっている若者に「土をさわろうぜ、風と生きようぜ」と、野菜作りの体験を通して力になりたいと呼びかけています。
 彼はギターをかかえて、「遺書」「その一歩はまちがっている」「薬物依存」「生きてくれ」の四曲を熱唱しました。ちょっと変わった曲名ですが、自分らしく生きたい、なりたい自分になりたいという願いが伝わってきました。
 仕事に就き、彼女と出会い、結婚し、子どもができ、彼の表情や歌にも変化が生まれました。長い相談員は、その彼に一年に一度会うことを楽しみにしているし、佐藤さんも「ずっと呼んででください。」とこの会を心待ちにしてくれています。
 初めて聞く話ばかりで、とてもショックでしたが、自分にとっては素晴らしい会になりました。虐待が子どもたちの人格を壊すことを今さらのように感じることができました。安全なところで安心して暮らせることは当たり前ではありません。また、今日は「教育虐待」と言う新しい言葉を聞きました。『虐待』に対する見方の自分の甘さを思い知らされました。虐待から受けた傷から立ち直るのは容易なことではないと思いますが、シェルタ―モモや自立援助ホームでの『やさしく、ありのままを受けとめる』地道な活動をされている方々の思いが少しずつ伝わっているのだと思います。でも、SOSを出せる関係づくりの前に、職員が限界を感じることもあるのでしょうね。経験を通して、愛してくれる親がいないと子どもは育たない、人が人として育つ土台が『愛されること』だとひしひしと感じている西﨑さんの言葉が胸にしみました。ありがとうございました。  六〇代 女性

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  子どもたちをとりまくきびしい現状がとてもよくわかりました。教育虐待という言葉も初めて聞きました。とても見えづらい問題だと思いました。
 普段は大人の精神障害者の方々に仕事でかかわっているのですが、育ってきた親子関係や子どものころの環境をもう一度見つめなおすことで、対象者理解に役立てたいと思いました。  三〇代 女性

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第28回総会に初めて参加しました。孫のことから「相談ネットワーク通信」を読むようになりました。私の子ども三人を育てる時から、ネットワークには入っていましたが、仕事が忙しいので、三人の子育ては適当にして、自然体で育て、元気でのびのび育ってきたと思います。しかし、孫のことに関しては、いろいろ考えさせられました。中学二年生男子、小学四年生女子、五歳の男子の孫たち。かわいいので心配になります。これからも相談したいと思います。私の長男夫婦に任せていますが「困ったらいつでも相談にのるから」と言っています。これからも学んでいきますのでよろしくお願いします。
 西﨑宏美さんのお話はたいへんよかったです。子どもの権利と子どもシェルターモモの子どもたち本当に知らなかった世界でした。子どもがもっている権利の保障を・・・とがんばっている姿に感動しました。   七〇代 女性

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社会的養護の必要な子どもたちの置かれている厳しい現状が理解できた。子どもの成育が親や家庭の環境によって大きく左右されるのは公平性を欠き、問題だと思う。 子育てを親の「自己責任」からある程度切り離して、子どもが等しく社会の中で健やかに育つ制度を作っていくべきだと思った。  四〇代 男性

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[ホシの一日」               川野恵子 作


ホシ、ボブおじいさんに出会う

「ふぃ~、ビックリしたぁ!」
ホシは、現場から遠く離れた原っぱで一息ついていた。
「あ~んな大きいのが、あ~んなにビューっ て来るなんて!」
ホシは、怒りと恐ろしさで、まだ心臓をドキドキいわせていた。
「今度からは、気をつけよう。」
ホシはそうひとりごちると、日当たりの良い場所を見つけて、昼寝をすることにした。
「あ~、いい気持ちだ な。幸せだな。 暖かいな。」
ウトウトしてきたホシは、背後に野良犬が近寄ってきていることに気付かなかった。
 野良犬は、そーっとホシに近づき、その鼻面をホシの丸まった背中に押し付けた。
「クンクン、こりゃ、猫じゃな。」
「あひゃっ!!」
ホシは、驚いて、振り向きざまに、その野良犬の鼻をひっかいた!
「いだーっ!」
野良犬は、ひっくり返ると手足をバタバタさせて痛がった。いつもならホシはここで逃げるところなのだが、あまりにも野良犬が情けなく痛がっているので、申し訳ない気持ちになり、そーっと野良犬に近寄った。
「あの、ごめんなさい。その、びっく りしちゃって。あー、えっと、大丈 夫ですか?」
ホシは、頭を垂れて謝り、上目遣いで聞いた。今は、お座りの状態で、前足を使って自分の鼻をなでていた野良犬は、痛そうな顔から無理やりつくった笑顔でホシを見ると、
「大丈夫じゃよ。いつもワシが昼寝す る場所に何かおるなと思って臭った のがいかんかったんじゃ。」
と目をしばたかせて言った。よく見ると、その野良犬はだいぶおじいさんのようで、やせ細った体に大きな首輪が印象的だった。
「おじいさん、首輪をしているけれど、 飼い犬じゃないの?」
「あぁ、これは、ずーっと昔にな、ワ シをボブと名付けてくれた男の子が くれたものなのじゃよ。」
と、少し寂しそうな口調でおじいさんは言った。
「うん、お前さんは、どうやら飼い猫 のようじゃの。」
「どうしてわかったの!」
ホシは驚いて言った。
「うむ、その赤いリボンを見れば一目 瞭然じゃ。」
そういった途端、どこからかグゥーっという低く響く音が聞こえてきた。どうやらボブおじいさんのお腹から聞こえてくるらしかった。
「ボブおじいさん、良かったら私の家 に来ませんか。私の梅おばあちゃん は、きっとボブおじいさんに何かお いしいものをくれますよ。」
「おぉ、でもそりゃ、悪いからのぉ。」
ボブおじいさんは、遠慮して後ずさった。
「いいから、いいから、私についてき てください。鼻のお詫びです。」
ホシはそういうと、タッタと駆け出した。
「おぉ、ありがとよぅ。」
ボブおじいさんは、嬉しそうについてきた。
 途中、トラに会ったが、ホシが「やあ!」と声をかけても、ポカーンと口を開けて、まるで自転車に乗った猫を見るような顔つきでホシとボブおじいさんを見るばかりだった。
「どうしたのかしら、トラったら。」
「ワシとお前さんが一緒に歩いておる のが理解できんでおるんじゃろう。 そういえば、お前さん、名前はなん と言ったかな?」
「あ、わたし、ホシって いいます。」
と、そのとき、ホシを呼ぶ梅おばあちゃんの声がした。
「ホシ、ホシや、庭にお らんかね。」
「ただいま~。」
と大きな声で鳴いて帰ってきたホシは、ボブおじいさんを紹介した。
「ボブおじいさんよ。」
「あらあら、まぁまぁ、 今までホシが 友達の 猫を連れて来たことは あったけれど、犬まで 連れてくるなんてねぇ。 ホシは顔が広いのね。」
そういわれたホシは、自分の顔がビヨーンと伸びるところを想像して青ざめた。
「ホシさん、顔が広い、というのは、 色んな知り合いがいる、ということ じゃよ。心配せんでもええ。」
ボブおじいさんに優しくそう言われ、ホシはホッと息をついた。

ボブおじいさん   家族になる

「やぁ・・・きれいな桜じゃなぁ。」
ボブおじいさんは、庭の桜を見上げてしみじみとそう言った。その時、
「シャーッ!」
シロがボブおじいさんに向かって毛を逆立てている。
「ホシ!早く逃げてっ!」
今にもボブおじいさんに飛びかかりそうなシロを見て、ホシは慌てて叫んだ。
「違うの!違うの!ボブおじいさんは・・・ わたしのお友だちなのっ!」
シロとボブおじいさんは驚いた顔をした。
「ホシ・・・いつの間に犬の友だちが できたの?」
シロはそう聞き、
「ほっほっ、ワシのことを友だちとい うてくださるか。」
ボブおじいさんは嬉しそうに言った。
「うん、さっき原っぱでね。」
ホシはにっこりしてそう言った。
「ホシのお友達さん、これ食べるかい?」
梅おばあちゃんは、ボブおじいさんに大きなお椀を差し出した。
「おぉ、これはこれは・・・ありがた くいただきます。」
ボブおじいさんは、お椀に鼻を突っ込んで勢いよく食べ始めた。
「早食いだな」
いつの間にか来ていたトラが、その様子を見て呟いた。
「トラ!トラも来てたんだ。」
トラはホシのことが心配でやってきたのだった。
「では、ワシはそろそろ・・・」
そう言って立ち去ろうとするボブおじいさんを、ホシは慌ててとめた。
「待ってください。ボブおじいさん、 今来たばかりじゃないですか。」
「・・・しかし、迷惑をかけるでな。」
「迷惑だなんてそんな・・・」
ホシがそう言ったとき、梅おばあちゃんがボソリと言った。
「飼い犬じゃあないみたいだし、この ままだと保健所に捕まってしまうか もしれないわねぇ。」
それを聞いたホシはシロに小声で聞いた。
「保健所って何?」
「野良犬や野良猫を捕まえる人たちが いるの。」

「えっ、何で?」
「人間たちの中には、野良犬や野良猫 をよく思わない人たちもいるの。中 でも犬の場合は人間を噛んだりする こともあるから。保健所に捕まった ら、たぶんもう帰っては来れなくな るんじゃないかな。」
「そうなの・・・」
ホシは自分が飼い猫でよかったと心底思った。と同時にボブおじいさんのことが心配になった。
「ボブおじいさんは人間を噛むような 犬じゃないもの。保健所に捕まった ら大変。」
ホシはボブおじいさんを見て言った。
「どうにかならないかな。」
ホシがそう言うのと、梅おばあちゃんがボブおじいさんに
「うちにくるかい?」と尋ねたのは。ほぼ同時だった。
「わーい!」
ホシは嬉しくなって飛び上がった。
「ボブおじいさん、うちにくるでしょ。」
「・・・そりゃ、嬉しいが、ほんとう に、いいんじゃろうか。」
ボブおじいさんは、上目づかいに梅おばあちゃんを見た。梅おばあちゃんは頷きながら部屋の中へ入って行った。
「ねぇ、ねぇ、シロ、それにトラもう ちに来ない?」
ホシがそう言うと、シロは笑って言った。
「ありがとう、ホシ。でも私は今の生 活が好きなの。」
「そっか、じゃトラは?」
「俺は飼い猫。」
「あっ、そうだった。忘れてた。」
「ホシらしいや。」
トラが笑ってそう言った。
「だって、トラって野良猫みたいなん だもん。」
ホシがそう言うと、トラは胸を張って言った。
「だろ。」
トラは塀の上に飛び乗ると、ボブおじいさんに言った。
「これからよろしくな。」
「ちょっと、年上には敬語を使うのが 礼儀でしょ。」
ホシに言われてトラはまごついた。
「よろしく・・・お願いします。」
トラはそういうとちょっとひげをピクピクさせて、
「じゃ、俺は行くから。」
と言って去って行った。
「じゃあ、私もそろそろ行くわ。」
シロがそう言った。
「えー、もうちょっといてくれたらい いのに。」
「タロが待ってるからね。」
気づけば、空にあった太陽は夕日に変わり、今にも沈もうとしていた。
「そっかぁ。」
ホシは両耳を平ませてそう言った。
「また来るから。」
シロはホシの額を舐めてから去って行った。
つまらなさそうな顔のホシを見て、ボブおじいさんは言った。
「ホシさん、遊ぼうか。」
「えっ、いいの?」
ホシとボブおじいさんは庭中を駆け回って追いかけごっこをしたり、じゃれて遊んだ。
気づくともう辺りは真っ暗で、二人のお腹はペコペコになっていた。
ちょうどタイミングよく梅おばあちゃんがごはんを持ってきてくれた。ホシとボブおじいさんはめいめいのお皿からそれぞれごはんを食べた。
「明日の朝、散歩に行きましょうね。」
梅おばあちゃんは、一生懸命ごはんを食べているボブおじいさんにそう言った。
「わたしも一緒に行くー!」
食べ終わったホシは、元気よくそう叫んだ。
「そうだ。犬小屋も用意しなくちゃね。」
梅おばあちゃんは優しい笑顔でそう呟いた。 9ページへつづく

ホシ海の夢をみる

ボブおじいさんは申し訳なさそうな顔で梅おばあちゃんを見て、そしてホシを見た。ホシはとてもワクワクした顔をしていた。
 その夜、ホシはボブおじいさんから彼の放浪記を聞いた。行った場所のこと、出会った人や動物たちのこと、不思議な出来事や恐ろしいこと、そして楽しかったことや嬉しかったこと。
「へぇ~、じゃあボブおじ いさんは何度も海を見て いるのね。」
ホシはうらやましそうにそう言った。
「そうじゃ。」
「わたしもいつか海に行っ てみたいなぁ。」
ボブおじいさんは頷くと、そろそろ家の中に入るように促した。
「えー、まだボブおじいさ んのお話聞きたいよぅ。」
ホシはそう言ったが、ボブおじいさんは優しく言った。
「また明日、話そう。」
少し疲れた様子のボブおじいさんを見て、ホシは頷いた。
「じゃあ、おやすみなさい。」
「おやすみ」
ボブおじいさんはそう言うと、梅おばあちゃんが用意してくれた毛布の上に丸くなって寝た。ホシは梅おばあちゃんがいる布団の中に潜り込んだ。
「今日はねぇ、ほんとうに 色んなことがあった一日 だった。」
ホシは梅おばあちゃんにそう言うと、こう付け加えた。
「でもとっても良い一日だっ た!」
「よしよし」
梅おばあちゃんがそう言ったとき、ホシはもう眠りについていた。そしてホシは、まだ見たことのない海の夢を見ていた。真っ青な海には不思議な生き物がぷかぷか泳ぎ、ホシも一緒に泳いでいた。  おわり

かわの けいこ

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今の私を責めないで、未来の私を励まして 生まれ育ち、学びながら育つということ⑧
学校風景 その2 高卒認定フジゼミ講師  志賀 兼允

校門に立っていた生徒指導担当の教師は、はじめヨーコと気づかなかったという。むしろ彼女のほうから「先生、私よ!わかる?」と声をかけてきて気づいたほどだった。そんな彼女は、すぐに生徒指導室に呼ばれて事情を聴かれたが、うまく教師をかわしながら、その場を逃げ切り一時間目の授業に入った。当時、私達の学校は、生徒がどんな姿で登校しようと教育を受ける権利を守る立場から、教室から追い出す事はしなかった。
 教室に入って、一番驚いたのは、教室の仲間たち。「そりゃあそうじゃろ先生!他のもんならともかく、ヨーコで~、誰が、信じる?まさか、まさかじゃもん!」と、その日は、まさに驚愕の一日の始まりだった。勿論、職員室でも大きな話題になった。担任教師が放課後、家庭訪問もしたが、彼女の変身ぶりの原因が分からないまま2年生最後の学期は始まった。放課後、授業が終わると、帰りのHRをすっぽかし、いつも必ず立ち寄っていた生徒会室にも顔を見せず、さっさと帰って行った。

 その後のくらしぶりは、みるみるエスカレートし、毎日のように遅刻、早退。授業中もかつてのような覇気のある姿勢はなく、盛り上げてくれた活発な挙手、発言もなく、けだるそうな態度で、眼差しもうつろに机の上に伏せて眠る事が多くなった。注意されると、はじめは仕方なく起き上がっていたが、何回も注意されると、ついに「うるせえんじゃ!」と反抗し、教室から抜け出し、大好きな養護教諭のいる保健室へ行った

 成績はどんどん下がっていく、それでも「将来はアメリカへ行きたい」という夢があり、英語の時間だけはがんばりをきかせていた。 何かが彼女の中に起きているという事は、誰もが感じていたが、要領のいいヨーコは、教師の問いかけにまともに応えず、実相に迫る事のないまま、三年生になった。・・・中略・・・

 彼女の急変の原因が分かったのは、三年生になって初めての家庭訪問での祖母からの話と、前後するようにヨーコが信頼している養護の先生との会話からだった

 実は、彼女は父子家庭であった。三歳の時、生まれたばかりの妹を産んだ後、すぐに母親が失踪。その後、父と祖母によって育てられていった。温かく穏やかな環境に囲まれ育ってきたという。そんな彼女の身に、突然大きな事件が襲ってきた。優しく育ちを見守り、家庭を支えてくれて来た父が突然、失踪していたのであった。後に聞いてヨーコの表現によれば、「テレビドラマのような話で、しばらく何が起きたのか理解することができなかった」ほどの衝撃。父は貯金通帳を置いて「探さないでほしい、当座の生活のために通帳を置いておく」と書き残して・・・彼女の様子が変わったのは、この時期からであった
 
 三年生になって生活の乱れは、一層激しくなった。言葉遣いは荒くなり、ついには煙草のにおいをさせながらの登校。校外では、万引きによる補導。薬物(シンナー)利用など・・・。そんな生活が続く中、夏休みに入って家出。それまでも時々家出はあったものの、友達の家にいて、すぐに見つけられる場所にいた。しかし、今回は居場所が分からず、長期にわたった。みんな心配しながらも手掛かりなし。警察にも届けを出した。ただ、私には不思議にひとつの予感があった。ヨーコは必ず夏休み前に現れると・・・それは・・・        つづく しが かねみつ

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無謀な世界一人旅 ⑱    ~最後の訪問地、ドイツへ~
相談ネットワーク    正保 宏文

今朝は、サンタマリア・マッジョーレ大聖堂へ行った。朝の清らかな陽光が、大聖堂に差し込み、そこだけが異様に明るい。訪問客も少なく、一か所で朝のミサが行われていた。荘厳だった。祭壇のマリア像の絵は、遠目から見ても温かく、すがすがしかった。朝の冷気をいっぱい吸い込み、十分堪能させていただいた。次に来るのはいつになるのかわからないと思いながら、何かしら感謝の気持ちでいっぱいだった。今日も気持ちだけ喜捨させていただいた。
 
 ミュンヘンの空港でも電車のキップの買い方がよくわからず、イケメンのパイロットにお願いして切符を買ってもらった。電車には乗れたのだが、ガイドブックのミュンヘン中央駅で降りることができず、通過してしまった。駅の表示が、ガイドブック通りではなかったのだ。仕方なく近くの車いすの人を連れた男性に尋ねた。引き返せということであった。彼らが下車しようとしたので、小生も一緒に降りて、引き返そうと思った。階段を下りないと引き返すことができなかったので、お礼に車椅子の一か所を支えさせてもらった。そしたら男性の一人が駅員に、何番ホームか聞いてくれた。持ちつ持たれつの旅がそこにあった。
 何とかミュンヘン中央駅に引き返したが、地下鉄U4の乗り場が分からず、四苦八苦。尋ねに尋ねて、やっと地下鉄へ乗車することができた。降りるべき駅に着いたが、方角がよくわからず、コンパスを使ってみたもののホテルは不明。犬も歩けば棒にあたるではないが、スーパーにあたった。周りにレストランみたいなものがなかったので、水と赤ワインと食料を買い込んで、ホテルに到着。今回の旅の中では、一番いい豪華なホテルにあたった。ホテルの窓からは、高層マンションが林立しているのが見えた。ミュンヘン中央駅から三キロメートルほど西に来たところで、ベッドタウン的なところであった。
 朝の朝食は、コンチネンタルだったけど、卵やトマト、フルーツ、ヨーグルトなどもあって、フランス、イタリアのとは雲泥の差だった。朝食が味気ないと元気の出具合が違ってくる。ドイツ人は、朝、しっかり食べて、よく働くのであろう。

 今日は、天気が今一歩なので、できるだけ歩くのを控えて、ノイエピナコテーク及びアルテピナコテークへ行ってみようと思った。どちらの美術館も日曜日は、フリーデーで無料だった。ノイエで印象に残ったのは、セガンティーニの農作業の農夫の絵とミレーの農夫一家の絵だった。ゴッホの『ひまわり』も、しかと見た。他に印象派の絵やクリムト(二点)の絵などがあった。その他、コッホの水のうまさに舌を巻いた。水が生き生きと流れていた。水が描けるのは、一流の証拠だろう。アルテで会った最初の画家は、名前は忘れたが、400年ほど前の画家で丹念に精密に生き物や植物を描いていた。感動の連続であった。二番目に出会ったのが、ヤン・ブリューゲルであった。人間技を越えた絵がそこにあった。米粒よりも小さいくらいの人間の姿を無数に描けるなんて、なんと表現したらよいのか。すごいとしか言いようがない。バン・ダイクやルーベンスはあか抜けている。ラファエロやダ・ヴィンチ、ボッチチェリは無論だが、このほか目についたのが、フラバトール・オメロ、フィリッポ・リッピなどである。
 ドイツは、小生にこんな贅沢な日を用意していてくれかと思うとうれしくなってきた。駅に帰る途中、歩行者天国で、ビールを一杯だけ堪能。一人で飲むビールは、どことなくわびしく、秋風が吹く感じであった。やっぱり、ビールは仲間と飲むのが一番だ。
 
アウグスブルクへ
 今日が月曜日だったのが、運のつき。ドイツでも月曜日が休みの所が多かったのだ。日本を出てから何回か、月曜日があったのにどこも休みの所にあたらなかった。たまたまラッキーだったのだ。仕方なく、開いているところへ行く以外に手はなかった。そこで行ったのが、アウグスブルクの旧市庁舎の黄金の間であった。アウグスブルクは、滋賀県長浜市と姉妹都市で、結婚式の打掛などが展示されていた。長浜市が贈った大皿の文字が90度傾いていたので受付の人に、訂正させていただいた。小生でも役に立ったことが嬉しかった。
 外に出ると雨。雨の中DOM教会へ行くも、お休み。教会が休みなんて信じられなかった。美術館もお休み。オヨヨノヨだった。気を取り直して、ULRICH教会を目指す。笑顔の素敵な受付の女性に敬意を表し、教会を出る時、一ユーロ喜捨。厳かな教会を独り占めにしていた時間は、何とも言えない豊かな時間であった。頭の中は、からっぽで、過ぎゆく時間を楽しんだのだ。市内マップを見ると市民ギャラリーがあったので、WCへも行けると思い、足を向けた。なんとそこは、アウグスブルク版の『イオン』ともいえるような所だった。WCに行くと番人がいて、0.5ユーロの標識。日本では考えられないが、払わないとWCに行けないので、コインを入れて用を足した。倉敷のイオンでトイレが有料だったら、どうなるのだろうかと思うと楽しかった。
 その後、足の向くまま気の向くまま市内をぶらついてみる。知らない街にたたずんでいる自分が不可思議だ。今回の旅で、月曜日であることがこんなに恨めしかったことはない。まあ、よい経験になったと、自分に言い聞かせて、アウグスブルクを後にした。   つづく しょうほ ひろふみ

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お願い


子育て・教育なんでも相談ネットワーク」が誕生して28年。子育てや教育の情報発信や、会員の交流の場として発行してきた「ネットワーク通信」が次回いよいよ記念すべき100号を迎えます。手書き通信から始め、最近ではたくさんの写真も載せられるようになり、時代と共に歩んできたことが分かります。皆様にぜひ百号記念のメッセージや随想をお寄せいただきますようお願いいたします。原稿は、はがき、手紙、メール何でもかまいません。相談ネットワークは、官制の相談機関ができた昨今、今までとは違う役割を担うようにもなってきています。しかし、設立の原点を忘れずこれからも、子どもたちが、かけがえのない個人として生き生きと学び育つためのお手伝いをしていきたいと思っています。引き続きご支援ご協力をお願いいたします。

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四季の花言葉

どもたちよ 暑かった夏に別れを告げた
花々が風にゆれる いとしい子どもたちよ
その瞳を上にむけよ 青い空 飛行機雲が
いくつものカーブを描く 今から72年前
岡山で戦争があった

さまじい爆音 逃げ惑う市民 黒い雨 のなか ぼくたちは 夜半から 朝方まで郊 外の田園のなかに身を潜めた 実に13万戸 が焼け 一千七百人もの人が亡くなった

しも いま戦争が起きれば
72年前とは全く違うだろう 子どもたちよ この空から一発の核弾頭で攻撃されたら  万事終わることを知らねばならぬ

みきった青空 実りの秋 子どもたちよ
瞳をもっと凝らせ 平和こそ日本に一番ふさ わしいことを ずっとずっと 忘れないで

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