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相談活動30年の信頼!ひとりで悩まず、まずは相談してみましょう。子育て・教育なんでも相談ネットワーク

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〒700-0822 岡山市北区表町1-4-64 上之町ビル3F

ネットワーク通信バックナンバーREPORT

 No.119(抄)

        目     次
忘れ残しのあれこれ3⑬       元代表世話人  難波 一夫
詩 母来たる           相談員  中山芳樹
メッセージ

発達期の子どもが危ない!      相談員    田中 博
わたしの一冊             相談員   秋山 正美
いじめを考える <PartⅢ①> 相談員 福 田  求 (“ののはな”教育相談”)
あなたが蛍になって  難波一夫
コロナ禍の 子どもたち

忘れ残しのあれこれ ⑬           元代表世話人  難波 一夫

巣立ち行く君に

A君 卒業おめでとう。
 長いようで短かった三年間、いろいろあったけれど、本当によかったね。
 これからは、就職しても、進学しても、きみのように農業をやっていくにしても、みんなピカピカの一年生。でも、これからは自分の「大人」の一年生。これまで身につけた「知識」や「教養」を「知恵」として活かしていくスタートラインだよね。
 いつか、きみに「いよいよマスカットづくりか、がんばれよ」と言ったら「ありがとう、いいマスカットを作りたいよ。宝石のようなのをな。でも、先生どんなに頑張っても一生のうち六十回ほどしか作れんからなあ。だから、一回一回が勝負なんです」と答えたのをよく覚えている。
 また、きみは「進学するだけが人生ではないよ。ぼくは学校歴はいらんけれど、学歴は自分の手で創っていきたい。ぼくにとってのすべての大学は、これからの毎日の生活の中にあるんだ」と言っていたのを決して忘れない。どうか、毎年、素晴らしいマスカットづくりに精進して、ステキな『大学生活』を送ってほしいと思っている。
 さて、新しい旅立ちにあたって、何かプレゼントをと、いろいろ考えた。そして、世界中でもっともすばらしいリンゴを贈ろうと思う。
 その一個目は、アダムとイブのリンゴ(愛)
 二つ目は、ニュートンのリンゴ(真実)
 三つ目は、ウイリアムテルのリンゴ(勇気)
 これらのリンゴの味をじっくりと味わってほしいと思う。
未来は君たちのもの。どうかいい『大学生活』を。
 道であったら声をかけてください。

なんば かずお

  ㎰ もうすぐブドウの季節になる。A君は、ブドウ農家を継いで、今立派なブドウを作っている。いい『大学生活』を送ったのだろう。


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 詩 母来たる             中山芳樹

 十年ぶりの母の来岡
 数日前から心騒ぐ
 米寿を迎える母
 何を思うてまたこの時に


 バスから降りる吾が母よ
 その顔も身体も小さくなっていた
 私の姿が目に入ると
 曲がった腰を伸ばして「芳樹」と呼んだ

 後楽園に行く予定
 でも雨だった
 近くの「夢二郷土美術館」へ
 夢二の絵の前で母はじっと佇んでいた

 古里行きのバスが来る
 乗った母  見送る私
 母も私も何度も何度も手を振った
 バスが車の波に消えてゆくまで


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メッセージ


子育て・教育なんでも相談ネットワークは、32年前高教組退職教員の呼びかけからスタートしました。この間、高教組には大変お世話になっています。岡山高教組80回定期大会に寄せて、代表がメッセージを送りました。メッセージの一部を紹介します。
本日は、岡山高教組80回定期大会の成功おめでとうございます。平素より、子育て・教育なんでも相談ネットワークの活動に多大なご支援・ご協力をいただき、大変ありがとうございます。
   ・・・中略・・・

 ウクライナの事態は,戦争こそが最大の人権蹂躙であり,「子育て・教育」の最大の妨げであることを明らかにしています。一人ひとりの人権が手厚くまもられ,「自分さがし」や「自分づくり」に安心してとりくめる温かい社会のもとでこそ,子どもたちの健やかな成長は可能です。
それだけに, 戦後教職員運動がその出発時から掲げてきた「教え子を再び戦場に送るまい」という合言葉とともに,『安保関連法に反対するママの会』が提唱する「だれの子どもも殺させない」というスローガンが,さらに重みを増しています。 18歳成人がはじまり,子ども・青年を賢明な主権者として育てるうえで,学校と教職員の果たす役割は,ますます大きくなっています。新自由主義的教育政策のもとで,子どもも教職員も息苦しさが増している学校の状況を改め,賃金や権利・労働条件の改善,特に真の「働き方改革」・「命と健康」のとりくみを前進させることが不可欠です。そして,生徒・子どもを真ん中に,「同僚性」が大切にされ,支え合い育ち合うことができる職場づくりが求められています。そのためにも,貴組合がますます大きな力を発揮されるよう期待し,メッセージといたします。


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発達期の子どもが危ない!      相談員    田中 博


一、わが子が分からない
 「わが子が異星人みたい」という母親の一言から「子どものスマホなどの利用に関するアンケート」と「子育て・教育のつどい2022」のとりくみが始まりました。三月から四月にかけて行ったアンケートには307人の0歳児から18歳までの保護者の方々が回答を寄せてくださいました。アンケートの記述には子どものスマホ利用に関して、多くの気になること・悩み・不安(〇印)がありました。
二、子どもの言語能力の獲得や維持の危機
 〇言葉遣いが悪くなる。なま返事が 増える 
 〇言葉遣いが悪くなった(「死ね」、 「殺すぞ」など)
 〇返事をしなくなった。 
 〇YouTubeの悪い言葉をよく使うに なった。
 〇スマホ(ゲーム)に夢中になって 人の話を聞かない。ゲームの口癖を まねる。言葉遣いが荒くなる。

考察

 身近な人との「語り合い」は語り合う両者のにおい・ぬくもり・手触り・顔や目の表情を伴った「言葉」です。乳幼児期の「言葉」の獲得は身近な人間の語りかけによって達成されます。アンケートでは0~3歳で半数がスマホを使っていました。「スマホに子守をさせる」という声もよく聞きます。スマホなど情報通信機器の使用が増す一方で、乳幼児期の身近な人々との対話の機会はどんどん減少しています。子どもの「言葉が育つ」機会が奪われているのではないでしょうか。
三、子どもの発達への多面的な悪影響: 視力悪化・学力低下・スマホ依存など
〇注意力の低下 常に持ってないと不安のようです。
 〇視力の低下が気になる。
 〇目が近いこと。姿勢が悪くなっていること。
 〇スマホ依存。交流を深められる反面、何かのきっかけでいじめになら ないか(TVニュースを見ていて)不安です。
 〇利用時間が長すぎて睡眠不足。学力低下がかなり目立つ。
四、遊び・外遊びの減少による発達のゆがみ
 〇依存性が高いようで利用時間が長くなり、他の遊び(外遊び)に興味を示さない。
 〇子どもの外遊びの時間がますます少なくなり、身体を動かして友達同士で群れる経験が減る。子どもの感性の低下を心配する。実際に人の顔を見て話をする大切さを感じてもらいたい。

考察

『遊び』にはルールがあり、これを守ることで『遊び』はいっそう楽しくなります。この体験をとおして、社会性・創造性・自発性を育て、他者の存在を意識することができます。『遊び』は子どもたちの心身の発達にとって不可欠のものです。
遊び・外遊びの減少は子どもたちが『人間になる』ために最も基本的な能力や機能に遅れやゆがみが出るのではないかと危惧されます。
五、「見せかけだけのつながり」か「顔が見えるつながり:地縁・血縁・ 同じ学校・同じ会社、同じサークルなど」か
 〇将来、ネットで友達とやりとりを始めた時、人間関係でトラブらない かと心配
 〇友だちとのかかわり方がうまくいっているのか心配
 〇LINEでの言葉不足による誤解から友人との間でトラブル
 〇悪口を拡散されて不登校になり、友だち関係が悪くなった。
 〇ツイッターでひどい内容の書き込みをされた。

考察

 質問のスマホ利用の「メリット」で、中・高校生は「友だちとの交流」が特に高くなっています。核家族化や外遊びの減少など、一人ひとりがばらばらにされてきた今、スマホは再び人と人を結びつける手段となったともいえます。しかし、ライン・フェイスブック・ツイッターで多くの人々とつながってはいるが、こうした「ネットによるつながり」に人間のぬくもりや息遣いはあるのでしょうか。
六、アンケートから見えてきたこと
  アンケートの記述で「大人になっても利用するツールなので、親側からのコントロールだけでなく、相談しながら(スマホとの)付き合い方、自制する力を学んでもらいたい」との回答がありました。スマホ等のメリットはたくさんあり、現代社会において大人もスマホなしでは生活できないのだから、子どもたちも遅かれ早かれ利用するようになります。それを前提に、健康被害や人間関係のトラブル、金銭トラブルその他の危険性もあることを知っておくことは大切です。使わせないというだけでは解決しないし、それは無理なことだと思われます。
 子どもの成長発達には道筋があります。成長の差はあっても。その発達に応じた学びが必要で、赤ちゃんには、大人の言葉かけや豊かな表情が、幼児には自分の手足を使って体をうごかすこと、遊びの中で育つ力、自然や実物に触れることによる発見や感動、一人から集団へ、つながり方もいろいろな方法があります。直接あって同じ活動をするのが一番いいのでしょうが、できないことの方が多い。手紙や電話、メール、ビデオ電話、ラインなどつながる方法が多様になったし便利にもなっています。学び方も変わってきます。わからないことがあったら、「人にたずねる」「本で調べる」「博物館や資料館へ出向く」「ネットで検索する」多様な学びが保障されることが、人として成長発達することにつながります。 スマホアンケートを通じて、保護者の方々の願いも見えてきたし、人として成長するためには何が欠かせないのかを改めて考えることができました。   たなか ひろし


 文科省のすすめる「GIGAスクール構想」も含め、子どもとネット社会についてはこれからも引き続き発信していきたいと思います。ネットワーク通信の読者のみなさん、周りの方とぜひ話題にしてください。

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わたしの一冊       相談員   秋山 正美

             
相談ネットワークの書棚の中に、立石おじさんの「岡山ことわざカルタ」(吉備人出版)を見つけました。2006年12月に第一刷が発行されたものです。立石憲利さんは、岡山民族学会理事長で「民話のおじさん」で有名です。相談ネットワークとも古くからのお付き合いです。 
立石さんの「ごあいさつ」文を紹介します。
 「ことわざ(諺)の本来の意味は言の技(ことわざです)私たちの先人は、だらだらとした言葉ではなく。短い言葉で相手に教えたり、また相手を批判・攻撃したりしました。豊かな言語生活があったといえます。
 県内だけでも、実に多くのことわざがありましたが、この半世紀ほどのあいだに、言語生活の衰退のなかで忘れ去られようとしています。しかし、近年、言葉に対する関心が高まり、学校でもっと言葉の持つ力を重視して教えようという動きが始まっています。
 岡山の地で先人たちが残したことわざを、子どもたちが遊びの中で楽しみながら覚え身につけてほしい、また、お年寄りは記憶を回復する手段として使って欲しいと思い『ことわざカルタ』として作りました。
 家庭はもちろん、ぜひ学校、老人会、老人ホームなどでも活用していただければ幸いです。」
ネットワークで広げてみていると、「こんなことわざ初めて知った」「なるほど」と結構盛り上がるのです。立石さんの読み札(ことわざ)の裏には、そのことわざの意味やよく知られた同意のことわざも紹介されていて、本当によくできているなあと感心します。
 
絵札を描いたのは、稲岡健吾さんです。人物の表情が場面にぴったりのイラストで、カルタが楽しくなりますよ。

「春の彼岸頃になると麦は急に伸びてくる。彼岸が過ぎて肥料を施すと、熟期を遅らせたり、肥料の効き目がなかったりして役に立たない。人も、二十歳を過ぎるともう一人前の大人でありそれから親が意見をしたり、しつけをしようとしても遅い。肝心なことは適期に行えというたとえ。」
 


「三里は約十二キロ、八町は約九百メートル。「あんただけに教えてあげる、絶対に内緒よ」ーこそこそ話しても、すぐに漏れ、三里先までも広がってしまう。耳元でささやいても八町先まで届く。隠し事は漏れやすいというたとえ」



「秋、夕焼けがすると翌日は晴天になるので鎌を研いで稲刈りの準備をせよ。春(麦刈り、田植え時期)には、夕焼けがすると雨になるので蓑笠(雨具)を持てということ。県内で一番多く採録できたことわざ。それほど春秋の農繁期の天気は気がかりだったのだ。」
 
 わたしは、今まで夕焼けは「明日は晴れ」だと思い込んでいたので、このことわざは「ええっ!」と思ったのに、県内で一番多く採録と知って、またもや「ええっ!」でした。
 そのほかにも、「列を作ってアリがはうと雨」も岡山のことわざです。
「四季があり、天気が日々変わる国では、日常のあいさつにも必ず天気が出てきます。農業を左右する天気を予測することは大切で、ことわざも多いのです。「ツバメが低く飛べば雨が近い」「ブヨが群がるは雨」「池のコイがはね上がると雨が降る」「猫が耳越しに顔を洗うと雨」など。(立石解説)
 これらは、ネットワーク通信読者のみなさんにもお馴染みのことわざでしょうか。
 現在は、スマホのアプリで人工衛星で雲の動きをリアルで見ることができ、明日の天気どころか一週間先、十日先の天気も予測できるようになっています。自然から経験によって学んできたことは、これからも生きるのでしょうか?人と人とのコミュニケーションが希薄になりつつある現代人。空の様子や風の動き、生きものの動きから、明日の天気を予想してみてはいかがでしょう。あいさつ代わりに。
話は、変わって、わたしは、山好きの友人に誘われて、最近、県内の低山に登ることがあります。そこで、あたりまえのことのようですが、光の力を実感します。ものが見えるということは光が反射しそれが目に届くということの連続作用ですよね。暗闇では、ものの形や色を知ることはできません。光の強さによって、山の木々の美しさや日当たりのよいところと影のところのコントラストなどを、心の底から楽しむことができます。
 また、先日は、雨上がり、夕日が沈むころ、大きな大きな虹がわが家の東の空にかかりました。くっきりと大きな虹です。近所の農作業をしていた人にも教えて一緒に見ました。でも、陽が沈むにつれて、虹は薄くなりあっという間に消えてしまいました。
 水蒸気と光の関係などと科学的には説明できなくても、夕焼けや虹のような自然現象を楽しみ、生きるための知恵が、知識を超えて現代にまで伝えられたのだと思います。長い人間の生活の営みの中で。
 言葉の中に息づく民の知恵を感じる「ことわざカルタ」でした。 あきやままさみ


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いじめを考える <PartⅢ①> 
相談員 福 田  求      (“ののはな”教育相談”)


 

 6⃣ いじめへの対処

(1)家庭での指導
1)いじめられている子どもの心を支える
 

 子どもより人生経験や社会生活を送る上での知識や技術に長けている親は、子どもの話をよく聞かないうちに、子どもを低く評価したり親の判断を押し付けたりしがちです。そのような親が、子どもから「いじめられている。」と打ち明けられた時は、どのように接すればよいのでしょうか。
 まず、親は子どもを一人の人間として尊重し(子ども扱いしないで)、子どもの話すことをひたすら傾聴し、子どもの気持ちを受容することに努めます(右コラム参照)、
 そして「よく話してくれたね。いじめは犯罪行為だから、いじめる方が一方的に悪く、あなたは悪くないよ。私はいつもあなたの味方だからね。」と言って安心させ、折れそうになっている子どもの心を支えることが大切です。
 さらによくわからない点は納得するまでよく聴いて、共感的理解を示し(右コラム参照)、「解決は学校に任せよう。解決するまで学校には行かなくていいよ。私にできることは何でもしてあげるからね。」と言ってあげることです。そのような親を子どもは信頼し、いじめに遭った経験や辛い気持ちなども話すようになり、いじめをなくしていこうとする前向きな気持ちになってくるものです。

2)いじめの事実を文章化する

 次の段階としては、いじめの事実を確認しそれを文章にして記録することです。子どもが受けたいじめについて、いつ、どこで、誰に、どのような行為を受け、どのような心身の苦痛を味わった(ている)のかを文章にまとめて記録します。


 
【傾聴・受容・共感的理解とは?】
 子どもが心を開いて心の痛みを親に話してくれるようになるには、「今、ここ」に居る子どもが何を考え、何を感じているかを、純粋な心で(親が抱いている先入観や常識、子どもへの期待、あるいは他人や平均値と比べて子どもを評価する考え方などは一切脇に置いておいて)、ひたすら(反論や説教をしないで)聴く(傾聴する)ことです。
 そして話の内容が親から見て明らに誤ったものであったとしても、「この子はこのように考えているのだ。」と肯定も否定もせず(褒めも反論もせず)に受け止め(受容し)、あたかも自分がこの子の立場だったら、そのような言動をとるだろうと思った(共感的理解ができた)ら、「私があなただったとしても、あなたと同じようにするかもしれない。」と、理解できたことを伝えましょう。そうすることで、子どもは「親が自分のことを分ってくれている」と思い、親を信頼し、心を開くようになるのです。

 【いじめに関わる学校の責任】
 公立学校の責任(安全配慮義務違反、不法行為責任、国家賠償法上の責任)は、法律で定められた職務を適正に履行しているかどうかで問われます。いじめの場合は、「いじめ防止対策推進法」で定められている職務が適正に行われていれば、学校が責任を問われることはありません。ただし、生徒のいじめに加わって生徒の心を傷つけるような不適切な言動をとる教師には、法的責任とは別次元の、人間としての道義的責任や、教育者としての教育的責任が問われることとなります。
 一方、加害生徒には人権侵害を理由とする不法行為責任が、またその保護者には、いじめとの因果関係が認められる場合には、監督義務違反を理由とする不法行為責任が問われることになります。

これは、いじめかどうかを判定する重要な資料になります。加害者・学校を相手に真相を究明したり、いじめの再発を防ぐための話し合いを進めていったり、加害者との話がこじれて訴訟になったりした場合には、有効な資料となるものです。

3)学校にいじめの解決と再発防止策を要望する

2)で作成した文書をコピーしたものを保護者が担当教師に呈示し、いじめの解決を学校側に依頼します(いじめを解決して児童生徒の一人一人に学習権をはじめとする人権(表現の自由、幸福追求権など)を保障する責務が学校にはあるからです)。念のために、同じ文書のコピーを学校長宛てにも送付しておくことが、担当者の段階で報告がストップするのを防ぐためには有効です。
 一方、いじめを解決するためには、加害者だけではなく、観衆や傍観者も指導する必要があります。生徒一人一人が自分のしたことを正しく認識し、被害者の権利や心をどれだけ傷つけたのかを知るためには、ホームルームでの人権教育や心理教育<(2)2)③参照>を行ったうえで、周到な準備を行った教師の指導によるいじめについての具体的な話し合いが必要です。
 以上のことは、いじめの再発を防止することにもつながりますので、被害者側の人権保障の要望を簡潔に文書にまとめて学校側に提出したうえで、どのような対策を講じたのかも文書で回答してもらうようにします。これは、後に学校の責任(右コラム参照)を追及する時にも役立ちます。

(2)学校での指導
 
 日常の教育活動の中で、次の参照にあるような兆候に教師が気付いていじめを発見したり、学校に何らかのルートでいじめの情報が入ったりした場合の対応について考えていきます。

参照  いじめを見抜く教師の目をもつ 
          -最近こんな状況は見られませんか?


□学級の枠を越えて、他の学級の児童生徒が出入りしていないか。
□学級の枠を越えて、何人かでこそこそと話し、教師の目を避けていないか。
□教師が現れると、急によそよそしくなったり、しらけたりしてしまう雰囲気はないか。

□廊下などで教師の視線から逃げようとしている児童生徒はいないか。
□給食や掃除のとき、いつも特定の児童生徒が当番をやっていないか。
□掃除や休み時間にトイレで群れになっている児童生徒はいないか。
□最近、欠席遅刻・早退が目立って増えてきた児童生徒はいないか。
□いつもと表情の違う児童生徒はいないか。
□何となく気掛かりな行動の児童生徒はいないか。
□休み時間や給食の時間にひとりぼっちでいたり、食欲がなかったりする児童生徒 はいないか。
□何となく話したそうな素振りをみせる児童生徒はいないか。
□授業中の発言、態度、表情、振舞いなどに、これまでとは違った点が見られる児 童生徒はいないか。(続きは7⃣の資料に記載)
<https://www.pref.gifu.lg.jp/uploaded/attachment/120759.pdf>

(1)学校の指導         * 凡例:<第 条>・・・いじめ防止対策推進法条項

 いじめを予防・解消するために、学校の実情に応じていじめ防止に関する基本方針が定められ<第12条>、それに基づいて学校内のいじめ防止のための組織(いじめ対策委員会など)がつくられています<第22条>。いじめ対策委員会は、生徒の命や心身のケアを最優先する原則に従って、生徒の心のケアやいじめの概要の把握、それに基づく指導などを、学校を挙げて積極的に取組むための組織です<第23条>。
いじめの情報を受け取った教師は、一人で抱え込むことなく、いじめ対策委員会(管理職、生徒指導担当者、教育相談担当者、学年主任、養護教諭、該当生徒に関係する教師、スクールカウンセラーなどで構成)の開催を要請し、チームでいじめ問題を解決する体制を始動させます<第22条>。
* いじめ対策委員会での役割分担・・・いじめに関係する生徒の気持ちや心身の苦痛を傾聴する係、加害生徒や観衆の指導を担当する係、いじめの全容を明らかにして関係生徒を指導する係、クラスの生徒へのアンケート調査や心理教育を担当する係、保護者や教育委員会・地域資源などと連携する係など。ただし、重大事態(生徒の生命・心身または財産に重大な被害が生じたり、生徒が不登校を余儀なくされていたりする疑いあると認められた場合)に対しては、いじめ対策委員会は、質問票の使用や個別面接などにより、重大事態に係る事実関係を明確にするための調査を行い、生徒とその保護者に対し、その調査結果を適切に提供することが義務付けられています。<第28条>学校は、教育委員会を通じて、重大事態が発生した旨を、知事に報告し、知事は必要が有れば第三者委員会を設けて調査を行い、その結果を議会に報告しなければなりません<第30条>。
また、いじめが解決するまで、被害者からの要望があれば、加害生徒を別室登校<第23条>させたり、いじめの被害生徒に学校に来なくてもよい措置(オンライン授業の導入など)を講じたりすることにも配慮する必要があるでしょう。
 さらに、暴力や恐喝を伴ういじめのように、刑事事件に該当する場合は、直ちに警察署に通報するとともに、保護者会での事情説明や保護者へのいじめ防止への協力を要請し、教育上必要がある場合は、加害生徒に対して懲戒を加えることも考慮しなければなりませんし<第25条>、SNSにおける誹謗中傷に対しては、学校からの「書き込み削除」をプロバイダーに請求することも必要です。
 とはいえ、加害者を探し出して罰を与えるだけではいじめの解決には至りません。継続的な相談活動の中で、被害・加害生徒の心のケア(カウンセリングやストレス対処法など)をスクールカウンセラーや専門医などと連携して行うとともに、「いじめがある」とか「同調圧力が強い」、「授業がわからない」などの問題があれば、児童生徒が対等に話し合い支えあって、安全で明るく楽しい学校生活が送れるような学級・学校づくりを、学年団に支えられた学級担任の指導の下、PTAなどとも連携して学校全体で実践していくことが、いじめ防止対策の基礎なのです。

2)生徒への指導と支援  参照(1)
 
 いじめの指導において大切なことは、犯人探しよりもいじめに関係した児童生徒の心や生活を立て直すことです。被害者は心に深い傷を負ってしまっているので、PTSDなどの精神障害や、不登校や自殺といった深刻な事態に陥ることを防ぐ手立ても必要です。加害者や観衆も、学校生活や家庭において強いストレスを受けている場合が多いので、単に罰を与えてすませるのでなく、いじめに走る歪められた心の痛みを聴きとり、それを解消していく方向を探らなければ立ち直りは期待できません。いじめを黙認している傍観者にも、いじめをなくして明るいクラスを作っていく主体的な行動がとれるように、ホームルームなどでの指導が必要です。
①被害生徒 
 まず、「いじめは犯罪なので、いじめる側が一方的に悪く、あなたは絶対に悪くない。先生はいつでもあなたの味方だし、いじめをなくして皆が安心して学校生活を送ることができるように学校全体であなたを支援するからね。」と言って安心して話すことができる場を作ることが大切です。そして今、どのような気持ちなのかを予断や偏見を排して真摯に傾聴して受容し、共感的に理解しようとします。即ち、いじめ被害者の心理(4⃣参照)を把握した上で、いじめられている児童生徒の立場に立ってその訴えを肯定も否定もせずに受け止め、よく聴き、その心情をくみ取っていくことです。そして感じとった辛さや悔しさ、あるいは先生に告げ口をしたと思われたらその仕返しが怖いという気持ちなどを理解してい ること言葉で伝えます((1)1)参照)。
 次に、「相手は大勢でいじめてくるので、親や先生、あるいは警察などの力を借りなければ、いじめを解決することはできないんだよ。決して自分ひとりで立ち向かおうとはしないでね。」と言って、心の負担を軽くしてあげましょう。そして、二度といじめが起こらないようにするために、事実の記録が必要なことを説明し、(1)2)と同様に、いじめの事実と心身の苦痛の状況を文書化します。これをもとにいじめ対策委員会の審議を促すのです。


   
 【 PTSD 】
* PTSD(心的外傷後ストレス障害)とは、生死に関わるような身の危険に遭遇したり、他者が死傷を負うような場面を目撃したりすすることで強い恐怖を感じ、そのトラウマが1カ月以上たっても、何度も繰り返し思い出されて生活に重大な支障を引き起こす精神疾患です。英語ではPost-Traumatic Stress Dis-orderと表記し、頭文字を取ってPTSDと称しています
 一方、本人の希望に応じてクラスの席替えやクラス替えによって被害者の気持ちを少しでも楽にさせたり、心の傷が大きい場合は、生徒と保護者の了解を得て医療機関などへ紹介したり、また生徒・保護者の希望が強い場合には休学や転校も配慮したりするなどの配慮も必要です<第25条>。さらに学校生活をよりよく過ごすために、担任や相談係あるいは部活動の顧問などが、「友情」や「今後の学校生活や進路・生き方」などについて話したり、現実的なコミュニケ―ションのとり方などを学ぶSST(社会技術訓練…人の考え方や思い・感情などを理解したり、自分の思考や感情の伝え方を練習したり、対人関係のトラブルを解決する方法を学び練習したりする方法。)に取り組んだりして、自尊感情や社会性を育てる支援も必要です。

②加害生徒(観衆を含む)

 加害生徒や観衆となった児童生徒たちには、被害者に接するときと同様に、まず、「何か嫌なことがあったのかな。」と、彼らの気持ちや言い分を傾聴したうえで、彼らの満たされない気持ちや劣等感などを受け止め、共感的理解を示します。そして被害者の辛さや悔しさ、不安や恐れ、孤独感、あるいは今までできていたことができなくなった不自由さなども考えさせ、被害者の人権を侵害したことへの反省を促します。たとえ加害者が観衆たちを巻き込んで、面白がっていじめているように見えても、彼らの強い劣等感(低学力など)や欲求不満(親からの虐待による愛情の飢餓など)を解消する(親への攻撃性を親に投影したり被害者に転化したりする)ためにいじめに走っている事例では、いくら丁寧に理性的に規範意識や道徳観を教え込もうとしても、受け入れてもらえません(彼らが第二反抗期に該当する場合はなおさらです)
彼らを加害者としてみるだけでなく、被害者としての側面もよく理解しようとして接することで、彼らとの信頼関係を築いていくことが指導の第一歩となるのです。このような家庭ストレスが強い事例では、スクールソーシャルワーカーや児童相談所などとの連携も必要となってきます。
 一方、いくら心のケアを行おうとしても全く反省の様子がない場合は、社会性やパーソナリティに偏りがあるかもしれないので、スクールカウンセラーや専門医に相談します。また必要があれば、加害生徒に別室登校や懲戒など、他の生徒が安心して学校生活を送ることができるような措置をとったり、保護者や関係諸機関などとの連携を密にしたりするとともに、保護者同士で話合わせてトラブルが生じることがないように配慮することも必要です<第22・23条>。 
 加害者に反省の気持ちが出てきたら、いじめた事実を文章化していじめ検討委員会に提出したり、今後のクラスメイトとの付き合い方を考えさせたりすることは、被害者の場合と同じです。
 【教師のカウンセリングマインド】
  
 どのような生徒であっても、的確な援助さえあれば自分自身の力で立ち直っていくことができることを信じて、生徒の不安や反抗・怒りなどにたじろがないで、「ひたすら生徒の気持ちを傾聴し、しっかり受容して、共感的理解を示す」( 6⃣(1)1)参照)ことができる教師の心の在り方のことをカウンセリングマインドと言うようです。
 たとえ心理学や精神医学などの専門的な知識や技術を修得していなくても、日頃から個々の生徒を個人として尊重し、生徒の声に耳を傾け、教育活動を真摯に実践し反省することを繰り返している教師には、生徒が信頼を寄せ、相談しようという気持ちになっていくのです。換言すれば、教師としてのアイデンティティ(自己同一性)を確立して日夜努力している反省的実践教師には、カウンセリングマインドが備わっているのではないでしょうか。
○いじめが解決しない間は、学校は別室登校や自宅学習などの配慮を行う。

②教師自身の権利を守る実践の開示・・・ 教師自らが組合活動や選挙時の投票行動、家事・育児の協働など、教師が身近な権利保障の行動を語ることによって、児童生徒に、いじめや差別のない明るい未来は自らの手で切り開くことができるのだという現実的な展望を与える。

③クラスでの話し合い(自分がいじめられて困ることは?どのような助けが必要か?自分が果たすことができる役割は?)・・・ 児童生徒が生の声をぶつけ合い、それらを調整することによって、いじめをはじめとする種々の人権侵害に対応する方法を考える。

④ロールプレイ(役割演技)・・・ ③で話し合った現実に起こる場面(被害者を支える、いじめを仲裁する、教師に通報するなど)を想定した役割分担を行い、擬似体験を行うことで、実際にいじめが起こったときに適切に対応できる行動力を身につける。

 このような「いじめをなくするホームルーム活動」が展開されることによって、児童生徒の皆が心理教育による基礎知識を基に、個人で考えたことを、小グループでの話し合いから全体への話し合いを経て、実際にいじめに遭った時に有効な対応の仕方がわかるようになります。その対応の仕方をロールプレイで擬似体験することによって、お互いの考え方や感情・行動についての理解も深まり、いじめによる心のわだかまりも薄らいでいくとともに、皆が問題の解決に向けて主体的に対応する力が身についていくのです。                            (PartⅢ❷ 7⃣につづく)
③ 傍観者 
 いじめに無関心を装う多くの傍観者は、「いじめは絶対にいけない」と思っていても、それを行動に移すことができません(4(3)参照)。彼らは、親に教えられたり、社会科や保健体育科、道徳などの授業で教わったりして、「いじめたら罰せられる。いじめは犯罪[命さえ奪う人権侵害]だ。命は何よりも大切だ。多様性は尊重されなければいけない。いじめられた人を助けると自分がいじめられる。」など、多くの知見を持っています。しかし、彼らには、このような知見をもとに、自分で、「どうしたら善く生きることができるか」を考え、周囲の人と話し合ってそこで得られた様々な意見を自分自身にとって最善の行動に結び付けていくような力が身についていないのです。
 その力を養うためには、いじめは許さないという一貫した態度で、児童生徒一人一人の人権を尊重し、明るく楽しいクラスづくりを目ざす教師(教師集団)が指導するホームルーム活動が必要不可欠です<52)参照>。

3)いじめをなくするホームルーム活動             (2時間以上) 
①心理教育・・・ 
○いじめの定義を説明する(1参照)
○いじめは不当な人権侵害(犯罪・差別)である(3参照)ので、加害者が一方的に悪く、被害者は悪くない(誰にもいじめる権利はなく、どのような理由も認められない) 
○いじめる側は多勢で強いので、いじめを察知したら、事実を正確に親や教師、警察などに通報して、解決を任せたほうがよい(一人で立ち向かったり、泣き寝入りしたりしない) 
○無関心は、いじめを助長する
○学校は全力を挙げていじめから皆を守る(学ぶ権利などの人権を保障する)


【スクールカウンセラーと スクールソーシャルワーカー】
* スクールカウンセラーは、カウンセリングを主な手法として、保護者や教職員へのコンサルテーション や関係機関との連係・調整を通して、児童生徒の心(心理領域)への働き掛けを主として行います。
* スクールソーシャルワーカーは、子どもの環境(福祉領域)への働き掛けを、関係機関との連携・調整を図りながら行うことによって、児童生徒のケアを行うものです。
* 両者は相補いながら教師と連携して、児童生徒の実情に応じた心身のケアを担っています。

○いじめが解決しない間は、学校は別室登校や自宅学習などの配慮を行う。

②教師自身の権利を守る実践の開示・・・ 教師自らが組合活動や選挙時の投票行動、家事・育児の協働など、教師が身近な権利保障の行動を語ることによって、児童生徒に、いじめや差別のない明るい未来は自らの手で切り開くことができるのだという現実的な展望を与える。

③クラスでの話し合い(自分がいじめられて困ることは?どのような助けが必要か?自分が果たすことができる役割は?)・・・ 児童生徒が生の声をぶつけ合い、それらを調整することによって、いじめをはじめとする種々の人権侵害に対応する方法を考える。

④ロールプレイ(役割演技)・・・ ③で話し合った現実に起こる場面(被害者を支える、いじめを仲裁する、教師に通報するなど)を想定した役割分担を行い、擬似体験を行うことで、実際にいじめが起こったときに適切に対応できる行動力を身につける。

 

あなたが蛍になって


 1945年6月といえば戦争の終わる二か月前。

若き特攻隊員の宮川軍曹は 知覧の基地から出撃した。
 ぼくらは、中学生で学徒動員のさ中であった。
「おばちゃん、死んだらホタルになってまたここへ帰って来る」と言い残して・・・。
 その夜、ホタルが一匹おばちゃんのそばに飛んできた。宮川軍曹が会いに来たに違いない。

 それから何十年ののち、戦争が終わっておばちゃんも亡くなった。
 その通夜、一匹のホタルが飛んできたという。


なんば かずお




加害者や学校とのトラブル】
 
 加害者や学校が「いじめは存在しなかった」と主張したり、いじめの事実を隠ぺいしたりする場合や、刑罰法令に触れたり損害賠償を請求したりする場合もあります。学校内では問題が解決できない場合は、学校における


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薔薇四方山話  相談員 山本 和弘

先日、年金者組合地元支部の行事で、RSKバラ園を訪ねました。もとより、「RSK」は、「山陽放送」の略称です。なにかモダンな響きのある「アール、エス、ケイ」とは、どのようなハイカラな言葉の略語かと思いきや、旧社名「ラジオ山陽株式会社」の頭文字だとは、「へええ」と思われる方も少なくないかもしれませんね。
「RSKバラ園」は、山陽放送がラジオ送信所の用地を利用し、地域の人々の憩いの場として昭和四九年に開園。バラは中央のラジオ放送アンテナ(高さ一〇五㍍)を中心に同心円型花壇に、およそ四五〇品種・一万五千株が植えられ、バラ園の外周には、梅園・サクラ並木・ボタン園・ハナショウブ園・ロックガーデンも併設され、チューリップ・フジ・ツツジ・ハナミズキ・アジサイ・大賀ハスなど四季おりおりの花木が植栽してあるそうです。
約四五〇品種・一万五千株というバラが、甘いかぐわしい香りを漂わせながら園内一面に咲き誇っている様は、圧巻でした。
ところで、バラの花といえば、思い出すエピソードがあります。
二〇一四年放送のNHK朝ドラ「花子とアン」で、主人公花子が女学校の文化祭に「ロミオトジュリエット」のシナリオ・演出を引き受ける一場面がありました(第26話)。

 「ロミオ・モンタギュー、あなたの家と私の家は互いに憎しみ合う宿命 …その忌まわしいモンタギューの名前をあなたが捨ててくださるなら、私も今すぐキャピレットの名を捨てますわ」
「名前が何だというのであろう、ロミオの名前を捨てたところで私は私だ!」
「ええ、バラはたとえほかのどんな名前でも、香りは同じ・・・名前が何だというのでしょう?」


このセリフが、花子には納得できず、

 「もしバラがアザミとかキャベツなんて名前だったら、あんな素敵に感じられるかしら?私のお父が吉平ではなく権兵衛って名前だったら、お母は好きになってるかしら?」


と、思案します、とはいえ、にわかに台本を書き直すいとまもなく、時間をせかされて、稽古を続けていたところ、 ロミオの「名前が何だというのであろう、ロミオの名前を捨てたところで私は私だ!」のセリフを受けて、ジュリエット役の葉山蓮子が、即興でセリフをこう改変したのでした。

 「ロミオ様、それはどうでしょうか ・・・もし、バラがアザミやキャベツという名前だったら、同じように香らないのではありませんか? やはり名前は大事なものです」


ちなみに、花子の「腹心の友」葉山蓮子を演じていたのは、現在進行中の朝ドラ「ちむどんどん」で、決して運命に屈しない健気な沖縄の母親役を好演している仲間由紀恵さんでした。そして蓮子のモデルは、大正三美人の一人、センセーショナルな駆け落ち事件「白蓮事件」でも知られる歌人柳原白蓮でした。
名前は大事というのは、モンゴメリの原作「赤毛のアン」で、「アン」自身もこだわったことのようでした。こんな場面があります。

 「『そうかしら』アンは思いに耽った顔をした。『薔薇はたとえどんな名前で呼ばれても甘く香るって本で読んだけれど、絶対にそんなことはないと思うわ。薔薇が薊(あざみ)とか座禅草(スカンク・キャベツ)とかいう名前だったら、あんないい香りはしないはずよ』」(第五章「アンの生いたち )


孤児院から引き取られたアンが初めてグリーンゲイブルズにやってきた時、マリラに名前を聞かれて 「Annではなく、Anne」と「eのついた綴りのアン」にこだわる場面も印象的です。マリラは、「eを付けなくてもたいした違いはない」と突き放しますが、アンは「あら、大ちがいだわ。そのほうがずっとすてきに見えるのですもの。名前を聞くと、すぐ目の前に、まるで印刷されたみたいに、その名前がうかんでこないこと?」と反論するのでした。ところで、忘れがたい薔薇の品種名に、「Souvenir d'Anne Frank」があります。「アンネのバラ」とも呼ばれ、RSKバラ園では「アンネの思い出」と表示してあります。
ベルギーの園芸家が作出した品種で、「アンネの日記」で知られるアンネ・フランクの父オットー・フランク氏に贈られたといいます。一九七二年に十本、一九七六年に再び十本が、オットー・フランク氏から日本に贈られたものが増殖され、全国で「アンネのバラ」として育てられているそうです。 このバラは蕾の時は赤、開花後に黄金色、サーモンピンク、そして赤へ変色する特徴があり、もし生き延びる事ができたなら、多くの可能性を秘めていたアンネを表現しているのだそうです。
「アンネの日記」から、彼女の言葉を、少しだけメモしておきます。

 「じっさい自分でも不思議なのは、わたしがいまだに理想のすべてを捨て去ってはいないという事実です。(中略)いまでも信じているからです。たとえいやなことばかりでも、人間の本性はやっぱり善なのだということを。」
「あなたのまわりにいまだ残されているすべての美しいもののことを考え、楽しい気持ちでいましょう。」
「なんと素晴らしいことでしょう!世界をよくすることを始めるのに誰も一瞬ですら待つ必要なんてないんです。」


ロシア・プーチン政権によるウクライナ侵略戦争が、無数のアンネ(いえ、それぞれが、大切な名前を持つひとり一人です。)を新たに生み出している悲痛な現実に思いを馳せながら、改めて噛みしめたい言葉です。



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コロナ禍の
 子どもたち



 不登校・自殺者が過去最高!
 2020年度、小中高の自殺者が415人、小中の不登校の児童・生徒が196127人といずれも過去最多であったことを文科省の発表で知った。自ら命を絶つ、なんと痛ましいことか。これらはあまりマスコミでも取り上げられていない。子どもも保護者も学校関係者も悩んでいる




 子どもの名前が覚えられない!

 高校の非常勤で働く教師は、「ぼくは、子どもの名前を覚えるのが得意だったんだけれど、コロナで、名前が覚えられない!マスクをしている、制服が同じ、髪型も同じ。あまりしゃべらないでは、覚えようがない」と嘆く。



 子どもがおとなしくなった!

 高校の先生から「最近、子どもがおとなしくなった」「のびのびしていない」「力がしぼんだような」と、いろいろな表現で、目の前にいる生徒の様子を話してくれた。
わたしは、小学校の授業を参観する機会があった。廊下から授業の様子を見せてもらった。密を避けるために、五年生の調理実習はクラスを半分に分けて行っていた。半分の児童は教室で自習していたが、とても静か。
低学年のクラスでもマスクをして表情が分からないし、先生の声は大きいのだが、子どもはここでも静かに授業を受けている。お客さんが来ているからと割り引いても、こんなに子どもはおとなしかったのかと思った。



 子どもはアナログがいい!
 
 老人にはデジタル社会から取り残されないためにスマホ教室、子どもには蟻(女王あり)やコケの観察教室や手作り体験など、公民館で工夫した活動を計画している話を聞いた。
館長さん曰く「子どもはアナログがいい。実物に出会う機会を増やしてやりたい」と。



 高校の修学旅行が復活!

 東京方面が多いそうで、「絶叫マシーンに乗ってスカッとした!」と話すのは引率の先生だ。一か月に80時間から100時間の超過勤務でクタクタの先生が、子ども以上に楽しんだという。笑えない話。

修学旅行実施にもいろいろ苦労があったそうで、コロナ陽性者や濃厚接触者を出さないために、金曜日リモート授業、土・日曜日は休み、月曜日リモート授業、「四日間は外出を控えること!」もちろん、生徒は守るでしょう。そして、火曜日から修学旅行にGO!
 色々な学校の先生たちが情報交換しながら、何とか修学旅行を実施したいと考えた秘策だとか。

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